神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。
第2回の内容
第2回は、平成28年2月21日(日曜日)に、「禅宗様建築の成立と発展」をテーマにして、円覚寺境内で山門や仏殿、舎利殿を見学し、その後、大書院でスライド等を使いながら、中国や国内の建築物との比較研究成果についての報告を行いました。
第1回に引き続き、定員を上回る応募があり、88名の方が熱心に講座を受講されました。
【第1部】実地解説
境内(山門、仏殿、舎利殿)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。
- 禅宗様建築について、山門、仏殿の各部位の説明。
- 舎利殿の見学(外から)。
【第2部】中間報告
鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。
- 舎利殿と国内外で現地調査を行った禅宗様建築、特に方三間の建築について詳細比較した成果について、比較表を見ながらの説明。
- 中国の建築物との共通点と国内で舎利殿前後に造られた建築物との相違点についての説明。
- 舎利殿と比較した国内外の建築物について、スライドの写真を用いながらの説明。国内の建築物については、4つの類型に分類。
現時点でのまとめとしては、以下の3点が挙げられます。
- 日本の禅宗様建築は、中国、特に江蘇省、浙江省の北宋から元にかけての時代の建築様式の諸要素を取り入れて成立した。
- 15世紀前半に建築された円覚寺舎利殿は、先行する永保寺観音堂や功山寺仏殿などの様式を、さらに繊細かつ精巧に進化させた禅宗様建築の典型・完成形と評価できる。
- 禅宗様建築は、円覚寺舎利殿を典型として、室町時代中期以降の安国寺釈迦堂、東光寺薬師堂、不動院金堂などに様式的変化(省略等)を伴いながら引き継がれ、日本における寺院建築様式として一般化し全国に拡散した。
>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について