神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。
第1回の内容
第1回は、平成27年11月15日(日曜日)に「鎌倉から始まった禅宗寺院」をテーマにして、建長寺境内で禅宗寺院や庭園などを見学し、その後、応供堂にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果についての報告を行いました。
あいにくの天気でしたが、96名の方々が参加されて、たいへん熱のこもった講座となりました。
【第1部】実地解説
境内(山門、仏殿、法堂)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。
- 元弘元年(1331年)につくられた「建長寺指図」を見ながら、当時から主要伽藍が一直線上に並んでおり、現在も維持されていること。
- 建長寺は、谷戸地形で平地が少ないため、山裾を垂直に切り下げ、中央部を埋め立てて敷地を確保する谷戸造成によって造られていること。
【第2部】中間報告
鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施していた比較研究についてスライド等を用いながら以下の点について報告しました。
- 建長寺については、立地・造成、伽藍配置について、国内外の類似資産との比較研究を行った。
- 比較を行った他寺院との相違点は、主に2点あること。狭隘な谷戸に立地し、山裾を垂直に切り落として境内を確保する造成は、鎌倉の寺院固有の立地及び造成法であること。さらに、方丈裏の曲池を伴う庭園は、建長寺から発生した日本独自のあり方である。
- 比較を行った他寺院との共通点として、一直線上の主要伽藍の配置が挙げられる。京都五山をはじめとする国内大禅宗寺院は、南宋五山から導入された建長寺の伽藍配置に倣ったものである。
- 現時点でのまとめとしては、建長寺の直線的な主要伽藍配置は、中国南宋五山との交流によって導入され、方丈裏庭園という新規の要素を交えて、我が国における伽藍配置の基本的在り方として大禅宗寺院に取り入れられ、現在も維持されている。この意味において、建長寺は日本における禅宗寺院の始まりである。
>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について